いよいよ開催が近づいてきた“Hurricane Festival 2006”
ここではハリケーン設立者、カーネーションの直枝さん、そしてハリケーンにて活動していく事を決意してくれた、日本を代表するロック・アイコンにしてフィロソフィスト、シーナ&ロケッツの鮎川さん&シーナさんにお集まり頂き、イベントへの思い、ニュー・オフィス、ハリケーンの展望・期待、そしてロックシーンへの深い愛まで、とても初対面とは思えない濃いトークが交されました。あまりに感動的な話続出なので、エディットなしのロングバージョンでお届けします。目がぱちぱちなったら休憩しつつ、読んで下さい!


―――ハリケーンという会社が立ち上がって、縁あって2つのバンドが活動の拠点をともにすることになった訳ですが先ず、直枝さん、自分のベースとなる会社ができたことを今、どう思っていますか。

直枝(N):じわじわ、じわじわ そのよろこびが今、きていて。

シーナ(S):じわじわってわかるなあ。

N :全く手探りではじまったんですが、お互い共鳴し合える人にも出会えて、すごくうれしいですね、今は。僕たちからすると、まず本根さんと出会って、本根さんも鮎川さんたちと出会っていて。そのつながりが、無理矢理なところがなくて、良いなあって。すごく自然な流れを感じてる。色んな波動が生まれる感覚。

―――ロケッツという素晴らしいバンドと出会って一緒に活動していこうとなった時はどうでした?

N :うれしかった。すごく。大先輩ですから。大学1年のとき、友達がバンドでシーナさんのソロ『いつだってビューティフル』の曲をカヴァーしていて、ハマりましたね。勿論、「ユー・メイ・ドリーム」『真空パック』は聞いていましたし。

鮎川 (A):初めて『ビューティフル』よかぜって言ってくれる人に会うたー。あれはLDKスタジオ、細野さんとシーナのプロジェクトやけど、バンドとしても自分たちの作品のように誇りに思っててさ。ところがあれは当時、思うようにプロモーションできんでさ。

S :そうそう。ちょうど一番下のチエちゃんが生まれた頃でね。

A :もの凄く良いアルバムで、みんなに聴いてほしいっちずっと思いよったけど…。今頃よ、直枝さんが誉めてくれてさ。

S : あの時はね、怒られた。おなかが大きくなったことで反感買われて。「困ったなー」って、そういう時代だったのよ。おめでたやのにね!めげてねー。

A : あの頃は学園祭やらいっぱいあってね、「鮎川もソロを出しとりますけん」ちてスタッフは全国アタマ下げてくれてね。

N :「シャネルの5番のオン・ザ・ロック」最高です。俺たちの大事な一ページです。

―――その後もシナロケは独自の活動を続けていきますが、直枝さんにとってシーナ&ロケッツとはどんなバンドですか?

N :すごいポップでガレージな雰囲気。こないだライブを拝見して、その背骨にブルースがあるんだ!って。スに点々つけたいブルーズさ!まさに日本が誇る本物のガレージ・ロック。とにかく、その格好良さ、音にやられた。

A :(テープレコーダーに向かって)聞いたか!みんな!ハリケーンだっぜ!(笑い)

N :オープニングの鮎川さんトリオの時からいきなり「バットマンのテーマ」のコードの鳴り!(歌う)バッマーン!って、あの鳴りったらないよ。本当凄い。歌心…ハートというか、ギター鳴らすのに一番重要なものが目の前にあるってかんじがしましたね。あと、シーナさんの「ハート・オブ・ストーン」!ロックアイコンのオーラをびんびんに発してました。

S :うれしい事ばかり言って貰って。何かお返ししなくちゃ(笑)。

N :ロケッツのキュートさが凝縮されたライブでしたね。しかもレコードとはまた違う、ディープな精神性というか、何十年分の厚みっていうか説得力。あてられました!

S :ずうっとライブしてきたからね。

N :そうですよね。ライブで作っていく、育んでいくものって絶対に簡単にくずれないし、長くやればやるだけ強靭にしなやかになっていくんだなあって思いました。絶対止まっちゃいけないんだってことを、あの一発目の(歌う)バッマーン!から教えてもらった。

S :田舎とか行くと勉強になるのよ。街や村のお祭りとか行って(ロックと)関係ない人一杯いる所でもやったりして、あれが凄い勉強になったのよ。ロックの中だけで甘えないライブ、音楽。あれを一杯したんですよ、ロケッツは。

N :俺なんかまだその途中で、やっぱり自分達を解ってくれてない人の前でやるのが弱冠苦手なところがあって。どうすれば伝えられるのか、そんな事しょっちゅう考えますね。まだ足らないんでしょうね。

A : 雪まつりで、昼間リハーサルしよったら、幼稚園の子たちがいっぱいワーってきよったことがあってね。これがロックンロールぜーって、やりよったら、(うれしそうに)パチパチパチやら可愛い拍手がきよってね(笑)そんなんがね。何かうれしいっちゃね。ロック詳しい人に解ってほしい気持ちはいつもあるんよ。「この曲はボ・ディドリーのWHO DO YOU LOVEのあのフレーズを秘かに入れとっけどお前ら解っとるかー」って。そういう自分らのマニアックな喜びもあるけど、一杯しよる中で、大味でも何かこう、マニア趣味やなしにみんなにもわかってもらえたらってのは勿論ある。一杯しよるとね、こっちも泣くし、お客さんも泣いたりするんよ。そんな時は…うれしかね。

S :うれしい。

N :世間一般の人たちと自分らが結びついてひとつの音楽になる。これはポップだと思う。ディープなのに決してマニアックに陥らない。

S :マニアックなだけのは格好悪いもんね。やっぱりみんなで笑いたいし、共有したいよね。みんな生活しとるもんね。ちゃんと。

―――鮎川さんシーナさんもカーネーションのライブをご覧になったとか。

S :良かったよー。

A : うん、本当に恥ずかしながらっちゅうかさ。83年デビュー?20年以上も、一回も会ったことないしね。本根君からはじめて聞くまで知らんやったことを俺たちはちょっぴり恥じ入りもしたし。そら、今これが面白いぜとかたまには聞こえてくるけれど、こっちも、レコーディングやったらまたライブってさ。それでね、こないだ、初めて、聞いた。んで、とてもニュージェネレーションちゅうか、恐ろしなーって。

―――(一同笑)

A :知らんことは恐ろしなあ。よく歌うし、ギターはとぎれもなく弾くし、難しいコード…あとで教えて貰おうって思いながら、本当にすごい、ディテイルにもこだわりを持った。東京ロックかなあ、これは!東京ロックのルーツから出た現在進行形。

S :(ポツリと)上手よ。

N :いやいや!(照)

S :いや、上手が大事よ。

A :大事よ。それと客観的に構成する力、曲を良く聞かせるためには…ちゅう気配りがもの凄うあるんよ。僕たちは70年代のおわりにバーンと出てね、そういうディテイルな所よりカツオをバン!とってきて、バンバンバン!ち切って、生で喰えー!(笑)みたいなさ。これが一番いいったい。それをシェフがソースをタラタラかけてそら上味いにきまっとろうけど、素材だーっち感じ。そういう時代やったんよ。パンクロックちうのは。アティチュードをみせんといかんのよ。美意識みせていかんと。イギーだ、ストーンズだラモーンズだ、そういうの好きな人達にアピールしていきたい!だから、こだわりのポイントが、より直感的になりよるのよ。スピード感やら、パンチやぜっち。だから、俺たちは、はっぴいえんどとかから一杯学んだわりには、ギターの音色一発でキメるとか、リズムのトランスを作るみたいな。で、シーナもその場でしか思いつかんひらめきで歌うやろ。カーネーションのインテリジェンスをもって曲を仕上げていくのとルーツは同じだなあ!って思ったけど、ロケッツはわりと、そういうのするといけんちうスタンスをつくってきたと思うんよ。出来もせんからしもせんけど、そんかわりガーっと突っ走ってそのアティチュードみたいんが伝わるような。それでカーネーションはおるべくしておる。すごい気に入ったし、尊敬したし。しかもたった3人でさ。一人一人が、上手かねって言ったよね。

S :うん、頼もしい。

N :誉められたことがないので…すごくうれしいです!

A : 俺ギターやからどんなソロ弾きよるかなと思うんよ。俺だったらどうするかなと思いながら聞きよったけど、いやいやもうマスターやね。

N :(照)(照)(本当に無言。小さくなる)

A : 俺驚いたんだけど、ドラムの矢部君のほうが古いんだね。大田さんよりね。

N :はい、そうです。

A : でもあの大田君がね、もう最初っからおるみたいな顔しておる。(一同笑)ベースってのはあれが大事よ。ベースの顔っちゅうのはあるのよ。ジョン・マクヴィーとかさ。その、三人の三角がダビデの星のように二つになったり五つになったりキラキラするのよね。途中のトークもね、音楽好きな人が好きなんだーっちゅうことをエクスプレッションする。これが意外と育たんロックンロールやったと思うんよ。あんまりコダワリっぽい話はせんで、それより、トロージャンヘッド赤く染めて、ステージ途中にまだ立っとうか気にしたりチェーンじゃらじゃらやらしてさ。バンドの連中がさ、そんな時代がちょっと続いてさ。60年代やらはやっぱり上手いかうもないかってのは割とわかりよったやない。まずこの人達は弾けるのか歌えるのか、みんな、そんな人達がロック育んできたのに…そん後は、商業主義ちうか、一杯名前言うたが勝ち、一杯活字に出たが勝ち。音楽を純粋にすきやった人達のステージのエクスプレッションちうのが…忘れられてる、とまでは言いとうないけど。カーネーションは本当に大事なものを備えていると思うんよ。好きやからする、ちうのが一番最初にないとさ。色々逆説的な動機ってのは今までいっぱい言われているけどね。モテるためとか金のためとかさ。そやけど、その前に本当にレコードの臭い嗅いで、本当に好きな人が喜びをもってその仲間に伝えていく。カーネーションはそういう一番大切なものをもってるバンドだと思います。そういうことです。

―――すごいですね。最大級の誉め言葉。僕は、両バンドとも音楽に溢れんばかりの愛情があって、その根っこにながされない力、ロックがあって、ハタから見ると共通点はあるんだなって思います。

N :勿論それはある。でも、でも表面的な所で違うようにみせていかないと、業界って説明しづらいんでしょうね。キャッチフレーズ、コピーをそれぞれのバンドにあてがって。でも、そんな事じゃなくて、今、鮎川さんがおしゃったように、レコードの臭い嗅いでハーッて陶酔して、いつの間にかギター持ってるってのはミュージシャンは皆同じです。そういう陶酔が好きな人達が残ってやっていくんだと思います。

―――カーネーションは20年、ロケッツはもっと長い間、サバイバルし続けなくては!みたいな使命感のようなものはどっかにあるのでしょうか。

N :自分達のことで精一杯とさっきおっしゃいましたけど、バンドはそれでこそ動くというか。それで動かしでいく。

A : 俺達は使命感とかは多分ないと思うんよ。そやけど、何ちゅうたらいいかな。何と云うか、シーンにもどこにも入らんままずーっとおるみたいな気がするんよ。入ったようでいざとなると入れてもらえん。東京ロッカーズにもテクノポップにも、めんたいロックにも。俺達はしかも入りたくないっち意思表示もすごいあるんよ。どこにも属したあないし群れ組んでやるよな、俺達と話しが合う、同じようなアタマ持っとるよるのは、めったにおらんわい。ずっとそんな感じやし、80年代後半になると今度はテレビで色んなバンドがバンバン出始めるんよ。もうそんなんに至っては俺達年がいき過ぎとる訳やし、もうその頃は音楽性でバンドとか語るのではなくて、面白いね、とか見てはっきりするキャラクターをバーンと打ち出す事で勝負しよって。なんかみんなもロックって商売に一口のってるみたいなさ。なおさら反発するのよ。そんなんみるとさ。バンドが続くとか続かんとかは…バンドは気楽なもんでもあるし、自分達の幻想でもある。あると思えばあるし、ないと思えばないわけっちゃね。「あるぞー」っち言うて「生きとるぞー」っち「今音が出よるぞー」っち言い続ける事ぐらいしか、自分らのアイデンティティってないんよ。そやけん、やる気たいね。自分らの。もう、やる気失せたりげんなりしたりもういいやっちなれば、明日キャンセルしようがどうもないわけやん。青なって走る人が何人かおるかもしらんけれども。誰が死ぬ訳でもない。そんぐらい無責任な存在やしな。何回も見てきとうよ、一人抜けたとか、出来んごとなったとか。そのかわり守りたいと思えば、すごい責任感を個人的に発揮せないかんやろ。いわれてやるわけないやん。ジョン・リー・フッカーやらも亡くなる直前までライブしよったけど、ライブは幾月何日、お前の街にいくぜって約束やけんね。だからそういう、使命感とはちょっと違うけれど、「ありつきたい」とかさ、まだここに在りたい。こげんな最高の場所は他に考えられんちう部分は、バンドの魔力やね。ステージに立って、ファンがいてくれるのは、最高。うれしいことよ。

―――カーネーションもメンバーの変遷はありましたよね。

N :毎回試練を迎えては、絶体乗り越えてやるっていう気持ちで。立ち止まるのはくやしいじゃないですか。僕は、ディラン、ザ・バンド、ニール・ヤングとかに憧れて憧れて、そういう地平線で歌いたいって夢、夢を追い続けたいんです。

S :伝わるよ。ステージみてて。

N :そうですか。

S :そこらへん。感動したもん。すごく何か孤高感が柴山さん(元サンハウスのヴォーカル。シナロケでは多くの歌詞を提供)に似てたりするんよ。

―――鮎川さんの、どこにも属せないというお言葉に同意されてましたけど。

N :僕らはムーンライダーズの鈴木さん兄弟のレーベルから出させてもらって、そこから独立して、独自の道を歩みだしたんですが、色んなシーンは流れていくんですが、どうもひっかからない。バンドブームとか渋谷系とか、全然関係なかったなあ。説明しづらいくくりづらいんでしょうかね。

―――キャラクターとか売り上げランクとか、ブーム、ジャンルがないと語られずらい。でもまず良い音楽。シンプルにロックしてるってのが、この2バンドですね。その2バンドが自然と出会って一緒にやっていくっていう必然ってあると思うんですけど。

N :そう思います。パワーあると思う、この出会いは。

A : もう一回、レコードを大事にするようなDJの時代になったやろう。もう一回、音楽が主役に戻っていくきざしかなと思うんよ。ディグして聞きまくって調べまくって。音楽と生きるんは格好いいことぜって、思う。そら、音楽はメディアを選ばんからMP3でも良いかもしれんけど、守らないかんもんでもあるのよ。だのに、ダウンロードとかちうて、使い捨てのチラシみたいにさ、音楽は便利情報ではないんよ。音楽をなめるなよ、ちゅう感じでさ。もっと大切なもんやし、それがもう一回みんなで気付き合いよるちゅうかさ。そんな、うれしい状況のスタートかなあ。俺らバンドは勿論ヘヴィ・リスナーやし、本根とかキング・ジョーとか、音楽に対する愛の深さがハンパではない共通の友人がこの2バンドには元々おったし。その自然な流れの中でひとつの場を作っていくってのは…音楽への愛を叫ぶみたいな、宣言する場所でもあるんやね。出し物としてはいくらでもあるよ。"東京ジャンキー・ナイト"とかつければさ、ジャンキーがいっぱい来るとか(笑)、アイデアは一杯あろうけど、一番語りたくても語られん部分やない。音楽が好きじゃーって、ありそうで、ない。すごいプレシャスな拠点になる、フェスティバルになればいいなっち思いますけどね。

N :まずロックを糧に生きてきた人間たち、失礼な言い方かもしれませんが、シーナ&ロケッツ、俺たち、エクスペリメントイ、三世代が。

A : うん、エクスペリメントイ。こないだ会うた。

S :良かったよー。

N :三世代が何かを超えながら一緒になってロックを愛して、やり続けていくのが形になっていくといいなと思います。何も考えずに来てほしいってのもありますけどね。良い意味で凄いショック与えるだろうし。ロックの新しい聞き方がここにあると気づいてもらえると思う。

―――奇しくも三つの世代が揃ったってのがこれ自体、ロックンロールへのリスペクトにも思えます。しかも現在進行形だし。三つのバンドのスタイルが全く違うからこそ、そこに通底する何かがみえてきそうな気がします。

S :カーネーションって女性ファンがおおいのね。びっくりしたよ。

N :そうでしたか。

S :ウチのファンは野郎が多いのよ。当日は両方のファンでお見合い状態ね。(一同爆笑)

聞き手:宮内健(ramblin')
構成 :本根誠

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